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October 19, 2010

定義森林軌道跡探訪記:04

 定義森林軌道跡を起点側より歩み、第一~第三架橋地点を通過してきた。崩落箇所付近の通行や深めの沢を横断するような際には細心の注意を払って歩みを進め、時に泥濘と化した軌道跡を前進することとなったが、各所に残る遺構には森林軌道が現役だった頃の名残りが色濃く見られ、また季節的にも紅葉直前の緑の木々が美しい中でのその光景は、往時の情景へとつながっているかのような感覚に囚われるほどであった。

※この探訪記を最初から→こちら(次回予告画像)

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 左へと曲がりつつ急速にその幅を狭める軌道跡。右側の斜面は低木生い茂る崖となり軌道跡に接してきている。水道局のものかコンクリ杭があり、僅か先に目線を置くと木々の葉の隙間から白いものがチラチラと見えている(○印内)。狭くなった軌道跡に立って見ていて不自然なほど低い視線の先にある白いものは崖下を流れる大倉川の川面の反射であり、軌道跡の右路肩幅が異様に狭く且つ急激に落ち込んでいる状況を意味している。落葉前の季節であるが故に視界が遮られて分からないが、紛れも無く崖っぷちに近い位置に立っているのであった。

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 数歩先に進むと軌道跡左側(山側)の斜面から岩盤が風化して崩れ落ちたらしい砂礫が堆積し始め、軌道跡をほぼ完全に埋め、藪化している。右側の路肩には崖に貼り付けられたような石積みの上部エッジを残す程度であり、そこには僅かな踏み跡しか見出せない。勿論、右側の石積みの向こうは急転直下となるような崖で、かなり高い。石積みの隙間などから生えた低木の葉が景色を遮っているが、その低木を越えた先には虚空があるのみ。エッジを見せる石積みは高さ1mくらいで、その下は引き続くかのような崖である。

 この地点は先人たちの記録で事前に承知していた。苔生して分かり辛いが橋台などとは異なるような精度の高い石積みで軌道路盤を確保している。そして歩む足元は堆積物で覆われたものとなることを。

 正直、自分自身が危険と判断して撤退する可能性があるとすれば、まずここになるだろうと想定していた。そこに差し掛かったのだ。ここに立ち、生い茂る木々の葉で石積みを撮ることが困難なのは分かった。足場は堆積した砂礫で崖側を下に傾斜していることを視認した。砂礫の堆積物はこの日の時点では程よく水分を含んでおり足を置いても締まる。水分を含み過ぎても乾き過ぎても流れ易くなる砂礫の状態はこの日ベストであると判断した。左手に生い茂る低木は手掛かりに使えると判断できた。右側の低木は保険というほどアテにはならないが無いよりはマシ。視界確保の観点から体勢を低くして進む必要性はあるが、突破可能と判断した。子供の頃にこのような砂礫の崖っぷちを通って遊んでいた裏山のことを思い出したからこそ、無理にではなく普通に判断できた。

 距離数mほどの区間。されど、慎重な前進が必要であることに変わりは無い。前屈みになり、左手で低木の根際を掴み、一歩ずつ、一歩ずつの慎重過ぎる前進を開始した。

 しかし、罠は私の足元に、ではなく背中に突き付けられていた。

 進み始めて何歩目か。上画像の奥へと入った時だった。

 体勢は左斜めに前傾し、左手は低木を掴んでは探るの繰り返し。

 そして、ある一歩。

 背にしていたはずの重さ10kgのザックが急に軽くなり体が浮いた。

 左側からの低木の枝が頭上を越え背にしたザックにザックリと突き刺さっている。

 これ以上、歩を進めれば枝の反動で崖側に押される。

 今、直立姿勢になっても同じようにバランスを崩すだろう。

 後退しようにも大きなザックが邪魔をして後方視界は悪い。

 何より、足場が悪い。

 唯一の逃げ場、か?

 バランスを崩されてしまう前に、自ら崩す。

 左側の砂礫傾斜面に体各所の全重心を持って行く。

 体重を掛け、ザックに刺さった枝をしならす。

 そして砂礫傾斜面に両手両足4つ足状態で腹這いになった。

 ゴム長靴の底を大倉川の上空に向けて。

 爪先を石積みのエッジに乗せる状態で。

 …。

 ザックに枝が刺さってから腹這いになるまで、5秒弱。

 いろいろ考え、全身の感覚が隅々覚醒された、5秒弱。

 ここで崖に靴底を向け自ら腹這いになったヤツは私くらいか?

 ザックに刺さった枝は、低木2本からそれぞれ伸びるそれぞれの枝だった。

 1本の枝だったら折れるなりして、足止めは食らわなかっただろうに。

 突き刺さる枝を後ろ手に引き抜く。

 なかなか1本だけ抜けない。

 身をよじり、両足と左手の3点で腹這い体勢から右横向きに体勢を変える。

 枝を掴んだ右手に力を込めて。

 おりゃ!

 バササッ。

 枝はザックから離れた。

 …。

 俺は何をしに来たんだ…。

 今回の予定ルートの中の難所という場面で…。

 プチ・スペクタクルな演出をしてしまった…。

 そんな予定は無かったのに。

 撮影機材用の大きなザックと枝の相性が良過ぎた上、背中の空間処理を誤った結果だった。枝の障害を取り除いて再び中腰で立ち上がり、前進を再開。足場が落ち着く地点まで辿り着き振り返ったが、石積みは藪で見え難かった。振り返りつつ、ここを再び大きなザックを背負っては通りたくはないなと、そう思った。

 またこの地点は低木の根張り等による影響で、今後石積みの崩壊が進む可能性がある。クラックが路盤及び石積みに見られるような場合には引き返したほうが良い。勿論、石積み下の崖斜面にも慎重に目を向けるべきだろう。

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 砂礫が埋めた軌道跡を過ぎて進行方向を望むと、もうそこは崩落地。枕木なのか何なのか、材木が急斜面に引っ掛かっている。左上に高巻くように踏み跡があり、行くべきルートは見える。しかしこの高巻きルートは数年前までは無かったルートである。先人たちの記録では画像の白破線部分、軌道跡路盤とほぼ同じレベルの高さを維持してルートがあったはず…。ここ数年での崩落でルートが変わったようだ。誰かが行き来しているからこそ明瞭に残っている踏み跡がある故に進めるが、これまでより慎重に進むことになる。(踏み跡が無かったら私の判断では撤退確実…。)

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 高巻き踏み跡のピークから崖下を望む。緑のトンネルの中を茶色の滑り台がブラインドコーナーを右に抜けて遥か彼方まで続いている。今、震度5弱以上の地震が起きたら、揺れでその場(傾斜地)に留まり切れなくて落ちるだろうな、と思った。ちなみにゴム長靴の靴底はピンスパイク仕様のものであるために、その場に留まってファインダーを覗き撮影していられる。普通のゴム底だったらいつ滑るか不安だし、歩くのも危険と判断したかもしれない。

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 数歩進んで進行方向を見る。正直、軌道跡のことを忘れる風景である。足元は軌道跡の路盤ではない。上部からの崩落土砂の上である。崖下は深く、下手な動き、無用な一歩は危険を意味する。足元の装備を間違えずに且つ下手な動きをしなければ良い。ただ、雨量の多かった後や地震の後のような場合には進むべきところではないだろう。ここはこの数年という短い期間で姿を変えている地点と言っても良いだろうから。
 そして、それでも踏み跡は確実な線を結んで左側の壁近くを先に進んでいた。それ故に慎重になら前進できる。

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 崩落地を乗り越える最後の足場の様子。踏み跡であって道ではないよな…。最後に昔々の崩落岩を越えて…。

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 軌道跡の平坦部へと辿り着いた。先人たちの過去画像のようには余裕を持っては歩けない崩落区間と化していたな…。荒々しい山岳地帯の一部にでもなってしまったようなこの崩落区間に踏み跡が付けられなくなる日も近いかもしれない。くれぐれも雨後、地震後、足元装備不足では立ち入らないということが賢明だ。晴れ続きの日に来ても気安さは無い。石積みエッジ部分の砂礫や低木もその一端なのだろうが、今現在、風化侵食の進行が著しい区間であろう。

→この地点の地図(Google Map)

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 平坦部に入り少し先に進むと、軌道跡は深めの切通しを通る。美しいな…。

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 しかし、山側(進行方向左手)の土手はこんな感じに脆々っとしている。下方通過時には気が抜けない。そして…。

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 切通しの先には第四の架橋地点が待ち構えていた。右側は崖である。

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 主桁は3本平行に整然と並ぶが、その高さにはズレが生じている。橋台があっても良さそうな橋だが見当たらない。もしかすると崩壊済みなのかもしれない。また、先人たちの過去画像と比べれば著しく枕木が減っている。この数年でかなり荒れた印象だ。落橋していない橋であるだけに、ここで遊んだ人も多いのかもしれない。荒れた要因に人為的なものが含まれるとすれば残念な限りだ。

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 僅かに残る枕木に釘。

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 第四架橋地点を振り返る。この地点の沢は小さいものだが岩盤を削るように流れやや傾斜があり、多少気を付けて渡った。

→この地点の地図(Google Map)

 さて、定義から十里平へ抜ける区間の軌道跡は後半セクションを迎えていく。

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