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October 11, 2008

空を這いずって…⑦

※.本文は劇場用アニメ“スカイ・クロラ”及び小説“スカイ・クロラ・シリーズ”のネタバレを含みます。

20081007_01 小説“スカイ・クロラ・シリーズ”を数日前に完読。最後の短篇集“スカイ・イクリプス”で、多くの謎が解け、また残った。

 劇場用アニメから小説の本シリーズ作品に入り込んだ私としては、読んでいて想像されるキャラクターや風景、場面などが押井テイストに影響されることは必至であったが、ほとんど影響なく楽しめた。むしろ、美麗な空中戦が脳裏に甦り、ダイナミックで、華麗で、小説を何倍も楽しませてくれる要素になったことは確かだった。ただ、劇場用に固執し過ぎると小説内の解釈に支障が生じることもある。劇場用は劇場用として改編されたものであることは忘れてはならないだろうけど。

 簡単にシリーズを振り返ってみると、私的には次のような構成だったろうと思われた。

“ナ・バ・テア”(None But Air)…草薙水素がエースパイロットへと成りつつある話。ティーチャーの居る名門チームに女性初所属として赴任した直後あたりから物語りは始まる。草薙とティーチャーとの関わりの中に、ライバル、師弟、男女など様々な人間関係が描かれる。その中で、キルドレである草薙の身に偶然の変化が起きていた。

“ダウン・ツ・ヘヴン”(Down to Heaven)…エースパイロットとなった草薙水素は「会社」の貴重な存在となり、それを失いたくない「会社」は草薙を前線パイロットとしては使いたくなかった。輝かしい戦績を挙げた草薙を企業の広告塔として、軍の教官として、失敗の許されない国家的デモンストレーションの絶対的な切り札として、「会社」は利用する話。草薙は空高く舞い上がれない日常の中で、再び舞い上がるために「会社」と折り合いを付けようとするが翻弄され続ける物語。

“フラッタ・リンツ・ライフ”(Flutter into Life)…指揮官となった草薙水素と、草薙と同じくらい長くパイロットを続けてきた栗田仁郎の、自らとお互いを見つめた話。栗田の視点で物語りは進む。自身に変化の生じた草薙と、何も変わらない栗田。栗田は自分の気持ち、人の心について思いを巡らす。二人の間には「彼女」の存在があった。そして「彼女」は、彼らの秘密を握っていた。「彼女」の行為が二人を近づけ、また遠のけた。

“クレィドゥ・ザ・スカイ”(Cradle the Sky)…病院を抜け出した自身を失ったままの『僕』と、それを受け入れた孤独な女、それを利用した優しい女の話。『僕』は大切な人を守るために、空を駆け、空へ舞い上がる。そして『僕』は、再び「僕」に戻れた。

“スカイ・クロラ”(The Sky Crawlers)…函南優一は草薙水素が司令官を務める基地に、栗田仁郎の補充要員として赴任してきた。前任者の謎の死と草薙をつなげる噂。草薙はしきりに生死の話を問いかけてくる。自らと人の生き死にを考える物語。

 と、ここまでが長篇シリーズの私の感想というか構成の解釈。で、短編集“スカイ・イクリプス”の各ストーリーは次のような感じ。

“ジャイロスコープ”(Gyroscope)…整備工笹倉が自作改良パーツを密かに?草薙の機体で試していたりしたエピソード。(“ダウン・ツ・ヘヴン”の後に位置する話だと思われる)

“ナイン・ライブス”(Nine Lives)…ティーチャーがロストック社を去った後、ラウテルン社パイロットとなった後のエピソード。(“ダウン・ツ・ヘヴン”以降の話)

“ワニング・ムーン”(Waning Moon)…函南の過去の墜落エピソード。(時期は未特定)

“スピッツ・ファイア”(Spit Fire)…基地に最寄の喫茶店でのある日のエピソード。喫茶店のマスター、草薙、老人、フーコ、クスミ、そして転属してきたばかりのパイロット(土岐野?)の話。(“フラッタ・リンツ・ライフ”直前くらいに位置する話と思われる)

“ハート・ドレイン”(Heart Drain)…草薙が、初めて「会社」に利用されたときのエピソード。(“ナ・バ・テア”よりも前の話)

“アース・ボーン”(Earth Born)…フーコの新たな門出のエピソード。(“スカイ・クロラ”の後の話)

“ドール・グローリィ”(Doll of Glory)…草薙瑞季のその後のエピソード。(“スカイ・クロラ”の後の話)

“スカイ・アッシュ”(Ash on the Sky)…草薙水素のその後のエピソード。(“アース・ボーン”の後の話)

 という感じ。草薙水素は復活を遂げている。函南はどうなったのか?というと、他のエピソード中に登場する。

 さて、ここで最大の謎掛けであった“クレィドゥ・ザ・スカイ”の『僕』の存在であるが、“スカイ・イクリプス”中のエピソード2話で、ほぼ明らかになったと言って良い。それ以外にもいろいろ手掛かりはあったが、“クレィドゥ・ザ・スカイ”中で『僕』が「ある人」にした約束を某エピソードで果たされているのである。そして、『僕』は「ある人」に会いに行くエピソードがあるのである。

 これまで結構なネタバレ話を展開してきたけれど、次回以降はかなり全開でしょう。小説既読者には楽しめる?ネタになるでしょう。未読者の人は見ないほうが良い(つまらん)でしょう。

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