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October 18, 2008

“スカイ・クロラ”の謎③

※.小説“スカイ・クロラ・シリーズ”及び劇場用アニメ“スカイ・クロラ”のネタバレを含みます。

 前回までは二大要素『戦争』と『キルドレ』、そして「劇場版を観て思ったことは小説で覆された」部分のことについてだったが、今回は「小説主体でのシリーズを読んで」の私なりの解釈や感想を少々。何度も言いますがネタバレ全開なので、シリーズを読もうとか考えている人は、小説を読み終えるまでこのブログ記事「“スカイ・クロラ”の謎」系を見ないほうが良いでしょう。

●普通の人間こそが謎を知っている? … キルドレたちが曖昧な記憶で生きているのに対し、普通の人間はそれなりにしっかりした記憶で生きている。

 フーコは、草薙水素が前線を離れていたときの話“ダウン・ツ・ヘヴン”以外には登場しており、様々な“時代”を客観的に垣間見てきた数少ない普通の人間だ。このような人間は他に笹倉が居て、次いで杣中くらいだろう。更に相良亜緒衣も居たりする。物語ではフーコとの接点や遣り取りが肝になっている部分が結構ある。第一は“グレィドゥ・ザ・スカイ”の『僕』との関わりだ。

 フーコは、“クレィドゥ~”の『僕』と一緒に、プチ逃避行をしている。それを楽しかった思い出として“~イクリプス”「スカイ・アッシュ」でフーコは『彼女』を相手に語っている。これは『僕』が女だったことを意味する。栗田ではないのだ。Wikiでは『栗田と思われる』となっているが、これは未読者の興を削いでしまうから?あえてそうしているのだろう。しかし勿論、それは“クレィドゥ~”までだけでも読み解けば判ること。例えば…

  • 病院を抜け出した『僕』がフーコに電話をしたときのフーコの言葉、「病院かぁ…。そうだったっけ?死んだと思ってたよ。」は、フーコが死亡情報を得ていたような反応であると共に、慕ってた栗田相手の言動としては何となく素っ気無い。
  • フーコの「あんたの前では(酒を)飲まなかったでしょう?」という話は、栗田には当てはまらない。“フラッタ・リンツ・ライフ”で栗田と二人きりのときに(館で)フーコは酔っ払っている。
  • 相良に電話をしている『僕』に、執拗に意味も無く絡む酔っ払いの男。それは『僕』が若い女だったからなのかもしれないと思える。
  • 相良邸で新聞記者杣中の話として草薙水素が堕ちて死んだこと、栗田が草薙に撃たれて死んだことが出てくる。フーコが得ていた死亡情報と同じと思われるが、内部組織による栗田の殺処分についてまで公表されるのか?は疑問で、フーコは知らなかった可能性もある。
  • 地下組織?のアジトに形式不明の戦闘機:散香があり、それを『僕』は「同じ機体に」乗っていたと言う。アジトの機体は胴体に機銃のあるタイプ(マークA~Dのアルファベット系統)であるが、栗田が「ずっと乗っていた(“フラッタ~”より)」のは主翼に機銃のあるタイプ(マーク7系統)である。
  • 「ブーメラン、飛んでいるか?」…耳の奥で、かすかに懐かしい声がする。(『僕』は草薙水素の可能性がある)

 でも、本当に“クレィドゥ~”の『僕』は女なのか?フーコや相良と一緒に寝てたり接吻したりしているじゃないか?と思われるが、それはそれ。女の友情?フーコと栗田の場合(“フラッタ~”)には身体を重ねあう表現があるが、『僕』との間には無い。フーコや相良と寄り添っていても関係がドライ、気持ちの問題なのだ。

 話を戻して、『僕』は「スカイ・アッシュ」で『彼女』になっている。フーコは喫茶店を営んでいる。ここに店を持てた、あの館からフーコが出て行けたのは、フーコは「クサナギ大尉から金をもらった」という館の女の話(土岐野が「アース・ボーン」で言っていた話)がある。草薙水素=『僕』がフーコに金をあげる理由は、“クレィドゥ~”で『僕』がフーコから少し金を借りており、返済を「きっと、送るよ。できるだけ沢山」と言っていることにある。

 結果『僕』こそ『草薙水素』なのだ。水素は“フラッタ・リンツ・ライフ”の最後「栗田不時着負傷」の後、エピローグ以前で堕ちている(杣中情報は本当)らしい。“フラッタ~”のエピローグは水素に相当すると思っている。喋れず、身動きできないほどに瀕死の負傷をしているのは栗田ではない、と思う。そこから“クレィドゥ~”につながっており、「それにしても、どうして、そんなに回復できた?」という甲斐の言葉になっているのだ。

 水素は“クレィドゥ~”以前、新聞記者の杣中に対し、栗田が娼婦と逃亡~殺処分についてを話している。だがこの「杣中に話をした記憶」は、その後に堕ちて瀕死となり記憶の混濁した水素(『僕』)が、病院を抜け出そうとする動機(ほかにも空に上がりたい一心もあるだろうが)を起こす記憶ともなり、娼婦=フーコと記憶が結び付いたために電話し、逃避行になり、途中で相良のことを思い出し…という展開が“クレィドゥ~”となっていると思われる。

 しかし、水素が堕ちる前に、水素が栗田を銃殺していることになると、“スカイ・クロラ”へつながらなくなる。“~クロラ”では栗田が死んだのは「一週間くらい前」と笹倉が話している。だが、堕ちた後の水素が『僕』の状態で栗田を殺しに行ける筈がない。“クレィドゥ~”では栗田はまだどこかで生きている。その後に死んでいる。水素が杣中に話した内容は作話で、、ロストック社は既に「栗田死亡」と情報操作している背景がある(“フラッタ~”で事件直後にロ社研究施設に転属となったのはこのためか?)のである。キルドレ研究をしていた相良亜緒衣との接点である栗田の存在を公から断ち切る必要があるからだろう。“フラッタ~”で栗田は相良に撃たれ、それが事件化、裁判化している。事件の背景が何なのかとマスコミは嗅ぎ回る。それが「ロ社から圧力を受けていたキルドレ研究のデータ(草薙水素)抹消に在る」ことを悟られてはならないからだろう。

 幸い、相良は事件を起こした要因に水素の存在があることや、「キルドレが普通の人間に戻れる」という可能性を、その社会的影響の大きさを認識していたために、警察でも裁判でも口にしなかったようである。それ故に、堕ちて入院していた『僕』こと水素に面会もできている。後に放免された相良の下に、病院を抜け出した『僕』が赴き、追手がかかる。研究者と最大のデータが揃っているわけだから、ロ社は黙っていない。追い詰められた結果、相良は自決を選び『僕』に撃たれて果てる。そして『僕』はロ社の下に戻ったのだ。おそらく、キルドレの秘密を握っていた相良が死んだことにより「キルドレが普通の人間に戻れる」という類の話題が矢面に立つ可能性は低くなり、栗田は再び前線に、そして草薙水素の下に戻った。これで“~クロラ”が始まる直前の舞台は整う。

 その後、栗田は何らかの理由で基地または病院を抜け出している。そして水素に銃殺されている。それは“~イクリプス”「ドール・グローリィ」で草薙瑞季の回想シーンが第三者の目である。栗田は基地または病院を抜け出し、女と逃亡先に居る。そこに水素が瑞季同伴で辿り着く。水素は栗田を連れ戻そうとするが、戻っても意味が無いと思った栗田が「もう、終わりにしましょう」と決心して水素に殺してもらうのだ。栗田は「水素の作話」に似たような状況で撃たれて死ぬという「偶然」が重なり、ストーリーが難解になっていると思われるのである。

 その約一週間後、函南は栗田の後任として赴任することになるのだが…。

 だがしかし“グレィドゥ~”には、更に“スカイ・クロラ”をも謎めいた物語としてしまう伏線がある。それはエピローグで杣中が函南に話した内容だ。半年前にアジトで散香に乗っていた『僕』が草薙水素だったこと、指揮官に復帰した草薙水素が別人のように見えたこと、むしろ函南が水素によく似ていること、だ。そして、“~イクリプス”にある数々のエピソードも相まって、ここでまたいろいろ仮説が出てきちゃうワケだ。

 また長々としてくるんで、今回はこの辺で。

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