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October 16, 2008

“スカイ・クロラ”の謎②

※.小説“スカイ・クロラ・シリーズ”及び劇場用アニメ“スカイ・クロラ”のネタバレを含みます。

 前回までは二大要素『戦争』と『キルドレ』について。今回は主に「劇場版を観て思ったことは小説で覆された」部分のことについて、私なりの解釈や感想を少々。もうここからはネタバレ全開なので、シリーズを読もうとか考えている人は、小説を読み終えるまでこのブログ記事「“スカイ・クロラ”の謎」系を見ないほうが良いでしょう。

●栗田仁郎の生まれ変わりこと函南優一、ではなかった? … 栗田の後任として函南が赴任することから始まるのが“スカイ・クロラ”である。栗田の愛機に函南が搭乗して違和感が無かったのは、栗田のコダワリの無さが要因したコックピットの素っ気無さと、函南と栗田が「信頼関係にあった」から気にならなかったのだろう。函南がミートパイを食べたことがあるような気がしたのは、栗田の記憶ではない「別の人」の記憶があったからだろう。三ツ矢碧が函南に言った「貴方はクリタさんの生まれ替わり」というのは思い込み。草薙水素が函南に言った「今度は貴方が私を殺して」は、劇場版だけの台詞であった。

 劇場用は、小説“ダウン・ツ・ヘヴン”刊行前にコンテ決定稿ができている。つまり、せいぜい“ナ・バ・テア”の部分までしか劇場用は加味されていない。それでいて押井監督の解釈でもあり、当然“ダウン~”以降の展開、特に栗田視点の“フラッタ・リンツ・ライフ”は反映されていないのだ。劇場用は「栗田・函南同一説」で構成されているが、小説シリーズでは同一ではなくなっている、ということなのである。

 小説に登場する栗田は、お世辞にもエースパイロットになるほどの腕前を持っていない。彼が生まれ変わることで函南ほどの腕前に昇華する理由が無いのだ。そして、小説で栗田は殺されていることは確かなようなので、それまでなのだ。

 では、函南は誰なのか?という話になる。実はここがこのシリーズの味噌だろう。これはまた後日。

●喫茶店の前に佇む老人は誰ってワケじゃない? … あの老人は何だ?という話題がある。誰かを暗示しているのかとか、誰かの生まれ変わりじゃないのかとか。劇場用ではひたすら無言で登場し、誰も何も説明しないので、見たまんま。想像や憶測しまくりのエッセンス。押井監督の何かの意図が込められているのかもしれないが…。

 小説では、“スカイ・クロラ”で土岐野尚史が老人について何かを待っているんだと函南に説明する。それを「神様かも」と言っている。“スカイ・イクリプス”の「スピッツ・ファイア」では、老人が店に来たパイロットなどに話をする。喫茶店の前を神様が通る、と。神様は天から舞い降り、2つの黄色く光る目があり、人よりずっと大きく、パチパチと火を吹くようなもの、白い布の服、などなど。きっと、喫茶店前に不時着する戦闘機とパイロットのことを言っているのではないか?と思われる。前照灯が目、火を吹くのはエキゾースト、白いパイロットスーツかパラシュートなんかを。

 で、「スピッツ~」で老人と話をすることになるバイク乗りの新任パイロットらしい「彼」が、赴任直後の土岐野だとしたら、喫茶店前に戦闘機で不時着、寄り道するクセのある土岐野の赴任前にも、同じようなパイロットがいたような話になる。老人がフーコらしき女から酒をもらい親しく話すのだが、それを「神様に会ったことがある。そのせいだ。」という。つまり、フーコの親しかった寄り道グセのあるパイロットと老人は親しかったから、フーコから酒をもらえたのだと。で、新たに来た土岐野も繰り返しの人生を送っている一人なんだよ、という話でもあろう。だからか、土岐野は自分の知らない自分の過去を知っているかもしれないフーコが苦手なのだ。

 「スピッツ~」で登場する新任パイロットを栗田と見ることもできるが、草薙らしき女性上司が既に何回か喫茶店に来ていることを考えれば、そんなに頻繁に草薙も店に来ないだろうし、一緒に転属してきた筈の栗田がかなり遅れて喫茶店に来たことにもなってしまう。栗田は借り物バイクで出かけることもあるが、専らクルマの人でもある。そう考えれば土岐野ではなかろうか、となる。草薙や栗田の転属と土岐野の赴任時期の前後関係は確かはっきりしてないし…。

 で、老人は何なのよ?(笑)まあ、土岐野の前身を知る者、か。

●草薙瑞季の生い立ちには謎が残った … “スカイ・クロラ”では自称「草薙水素の妹」、噂では「娘」とされている草薙瑞季。これは劇場用でも原作小説でも同じだ。劇場用では何となくロストック社の管理下に在るような感じだったが、どうなのか。

 出生後、父親であるティーチャーの元に引き取られ、義母と暮らしている様子を“スカイ・イクリプス”「ナイン・ライブス」に見られる。この中では瑞季であることの言明は無いが、“ナ・バ・テア”を読んでいれば必然的な話であろう。

 次に、“フラッタ・リンツ・ライフ”で草薙水素の母親の葬式前夜に登場する。瑞季は栗田に対し草薙水素の母親のことを「関係ない」と言い、「お父様が同じなの」と言っている。異母姉妹だという表現だが、この時の死んだ母親が結婚していた相手は水素の父親ではないことを、葬式会場に向かう車内で水素が栗田に対して話していることから、単純に2人の話を信じれば、死んだ母親の前夫が共通の父親かということになる。だが、葬式会場に前夫は居ない。瑞季は死んだと言っているからだ。瑞季がその場に存在する理由がなくなってしまう。そもそも瑞季は水素に呼ばれて来ており、仕込まれたデタラメを言っているに過ぎないこともあるのだけれど。

 実はこの「ナイン~」から“フラッタ~”に至るまでの経緯が全くわからない。水素がどうやって瑞季との接点を回復したのか。ティーチャーの元に居た筈の瑞季が草薙姓を名乗っているのはどういうことか。考えられることは3つある。瑞季がティーチャーの元よりロストック社側某組織に奪還された説が1つ。そもそも瑞季はティーチャーや水素のどちらにも引き取られていない説が1つ。残る1つは瑞季は草薙水素の娘ではなく妹説だ。

 ティーチャーに捨てられた説もあるが、それであれば元々引き取るようなこともなく、「ナイン~」のようなエピソードだけを語ってお終いというのも変である。きっとこの後、ティーチャーの元より奪還されている話(説)があるのである。水素が堕胎したときの医師の名は2人とも「相良」である。この2人“フラッタ~”と“クレィドゥ・ザ・スカイ”で登場する研究者、相良亜緒衣の父と兄であろう。この2人は「キルドレが元に戻る研究成果を隠蔽しようとする某組織」によって捕らえられ、自白剤で吐かされ、以後所在不明となっている。その際の自白で父親の身元が割れ、瑞季が奪還されているのではないだろうか。瑞季がキルドレと普通の人間との間の子という極めて少ないサンプルだからである。

 某組織とは、ロストック社情報部の特務部隊であろう。“クレィドゥ~”の最後、草薙水素とキルドレの秘密を握った相良亜緒衣と『僕』が逃げ込んだアジトに攻撃を仕掛けてきたのは甲斐率いる情報部の部隊だった。ロストック社はキルドレを利用している。キルドレが元の人間に戻れるようなことになれば、人権問題が強くなったり、パイロット能力が失われたり、戦闘員が不足することが考えられ、これまでの戦力構成が保てなくなるのだ。これを阻止するためには秘密を握るカケラ1つでさえ対外的に出してはいけない。研究されてはならない。部外の研究者などは抹殺してしまえば良いが、瑞季はそうはいかない。自社サンプルとして、もしかすると2大エースの子供として後の戦力になるかもしれない。そのための奪還が考えられるのだ。

 ロストック社側に奪還された瑞季のことは、水素に伝えられた。水素が不利な立場になることを指摘することにより、水素の軍への帰属意識、服従意識をつなぎとめようとする動きだ。そして瑞季は、ロストック社が管理する学校にて暮らしており、水素との接点が出来上がっていると考えられるのだ。だがこれは、ティーチャーに引き取られる以前に奪還されているケース(説)もあり、そうなるとティーチャーの元に居た赤ん坊は、水素以外の女との間に出来た子供ということになる。ティーチャーの余程な体たらく振りをエピソードにしているとは思えないので、この線は薄いか。

 次に妹説であるが、“スカイ・クロラ”において草薙水素はキルドレ歴14年と言っている。瑞季は10歳くらいというから、水素がキルドレ4年目に相当するときに生まれていることになる。実質の年齢差は最大22歳前後はある。これに異母姉妹ということを考えれば可能性は低くはない。瑞季の両親が死に身寄りが無くなったとき、水素が身柄を引き取ったということである。ティーチャーの元に居た赤ん坊は水素の子供ではあるが瑞季ではない。そういう線だ。“スカイ・イクリプス”「ドール・グローリィ」の瑞季の回想シーンで水素が栗田を撃つ前に「子供が見ている」と瑞季のことを言うが、これは実子という意味ではなく幼いという意味だろう。「ドール~」では結果として瑞季はキルドレではなかったようなので、そう考えれば瑞季は妹なのだという線でも落ち着いてしまうのだ。まあ、キルドレが完璧に優性で遺伝するものなのかという疑問もあるが。

 まあ、瑞季が居る、噂がある、水素が身篭るエピソードが出る、その赤ん坊が瑞季だという先入観となってしまう、そんな仕掛け。奪還だなんてドえらいエピソードがあったら楽しいけれど、きっと無いんだろうね。

 結局、決定的なものは得られなかったのだ。なんとなく妹。それに一票。

 他にもいろいろあるけれど、長くなるのでまた次回~。

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