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October 02, 2008

空を這いずって…⑤

※.本文は劇場アニメ“The Sky Crawlers”及び小説“ナ・バ・テア”“ダウン・ツ・ヘヴン”“フラッタ・リンツ・ライフ”“クレィドゥ・ザ・スカイ”のネタバレに相当する感想文などを含みます。

 「スカイ・クロラ」シリーズの小説“クレィドゥ・ザ・スカイ”(Cradle the Sky)を読み終えた。小説「スカイ・クロラ・シリーズ」のメイン“スカイ・クロラ”を残すのみ(短篇集“スカイ・イクリプス”を除く)となった。

 原作とは脚色が異なるが劇場版アニメ“スカイ・クロラ”を見ていることを踏まえると、一応はシリーズを一貫したゾ、ということにはなるけれども、原作を読まないと全体的な感想までは述べられないナァやっぱり。

 で、今回のお題“クレィドゥ・ザ・スカイ”は、シリーズ中で最も謎めいた雰囲気を持つとされている作品。時系列的に4番目。刊行順では長篇では最終の5番目。

 何が謎めいているか、というのは、シリーズで一貫して物語の語りべとなる第一人称が誰なのか、基本的に明確にされないままストーリーが進むことである。どの作品も『僕』がストーリーの中核となっているのだが、“クレイドゥ・ザ・スカイ”では、その『僕』を名前で読んでくれる周囲の人が居ないのである。もとより、『僕』本人ですら思い出せないのである。

 前作“フラッタ・リンツ・ライフ”からの流れであれば「クリタ」であろうと思われる。前作ラストで重症を負ったクリタは入院することになるのだが、本作は病院を抜け出すことから始まる。『僕』が言う怪我の理由にもつじつまが合う。だが…。『僕』の幻覚の中に登場するスイトは『僕』を「カンナミ」と呼ぶ。そして本作ラストに登場する恐らく同一人物?も「カンナミ」と呼ばれている。後者の「カンナミ」は“スカイ・クロラ”の「僕」であろう。

 「カンナミ」は“ダウン・ツ・ヘヴン”にも登場している。スイトの入院先で出会った少年であり、スイトが講師を務めたときの聴講生の一人であった。この時の「カンナミ」は入院(怪我)の理由も自身の名前も覚えておらず、周りが「カンナミ」と呼ぶから自分は「カンナミ」なんだと認識していた。そしてこの時の「カンナミ」は、“クレィドゥ・ザ・スカイ”の展開の中にある『僕』の状況とほぼ符合する夢を頻繁に見ていた。

 ナゼだ?

 劇場版アニメでは、単純には「カンナミ」は「クリタ」の生まれ変わりであって、その記憶の一部を共有している。もしかすると肉体(の組成?)も共有している。「クリタ」が「カンナミ」へと移行していく過程を作品に重ねると、“フラッタ・リンツ・ライフ”が「クリタ」の話で成り立ち、“スカイ・クロラ”が「カンナミ」であるから、その間の本作“クレィドゥ・ザ・スカイ”は「クリタ→カンナミ」への移行期にある『僕』の話とも受け取れる。

 だが…。

 “フラッタ~”では既に「クリタ」の目前に指揮官となったスイトが居る。それよりも前“ダウン~”においてパイロット時代のスイトは「カンナミ」に出会っている。その「カンナミ」が、『僕』の状況とほぼ符合する夢を見るというのは、ナゼなのか。

 “ダウン~”の「カンナミ」が既に“クレィドゥ~”にある夢の描写を経験済みというふうに時系列をいじってしまうと、スイト基準では「クリタ」以前にも「カンナミ」が居たことになる。ここが謎掛けでもあるのだろうか。

 そもそもシリーズ全てを読んでいないし、別に短篇集もある。また、物語の語りべである『僕』そのものが記憶や認識が混沌としているから、真実が無い。作者の意図は「キルドレ」というベールで面白く隠されているのである。

 もしかすると、“クレィドゥ~”は所謂「クリタ」の話でも所謂「カンナミ」の話しでも無い可能性だってある。この2人が共有しているパイロットとしての経験情報の根本が同じことによる「記憶のノイズ」という可能性だってある。キルドレが生産?される兵器の一部品だということを考えれば、だ。そして、新聞記者の話や生物学者の一言も絡めてくると、途中から「スイト」の話になっている可能性すらある。ここまで、「スイトがクリタを撃ち殺す」という“スカイ・クロラ”につながる描写は『僕』の幻覚の中でしかない。これを現実と見るか、記憶を現実化してしまっただけの幻覚と見るか、などという方向性によって、“クレィドゥ~”が何の物語なのかという捉え方がとにかく変わる。

 キルドレに宿る虚構と現実。それらが混沌としているストーリー。長編シリーズ5作目(長編最終刊行作)に当たる謎多き“クレィドゥ・ザ・スカイ”は、単純な時系列並びによる歴史の説明ではなく、世界観ともなっている「繰り返す日常」の中に生きるキルドレたちの記憶の物語なのかもしれない。

 キルドレと同じように混沌としたアタマで、いよいよ“スカイ・クロラ”へと突入だ。こうなったら短篇集もそのうちゲットだな。文庫本化はまだみたいだけれど…。

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